昼間は狩りに失敗して遠征に出かけたキラ子は、8pmの就寝時間になっても戻ってきませんでした。こんな日もあるかと思っていましたが、9pm過ぎに姿を現した時は「やったぁ」と思いました。日々の儀式と化していた、就寝のためのハウス設営が再び展開するのです。
虫眼鏡で見ると、光の加減なのか、キラ子がまだ子供だからなのか、昼間と比べて体の色が薄いような気がします。「これ本当にキラ子なのか?」一抹の不安。
息をひそめて見ていると、キラ子はあの編み目の多いカゴに飛び移り、ゆっくりと前進し始めました。頭から編み目にもぐり込んだ感じと、編み目から出た時の感じを確かめているようです。
「うーん違う」みたいな感じで、頭を上げて少し遠くを見、また別の編み目を試す。「うーんこれもちょっと違う」。
――始まった。
この行動は、まさしくキラ子のものです。去年の隊員ぴょこたんは、このような動きを私に見せたことは一度もありませんでした。
そうなると、今日はどの編み目で睡眠するかが気になります。しかし、私はやはり、延々と服を試着しては「違う」と言い続けるカノジョのショッピングに付き合う彼氏のような気持ちになってくるのでした。
――それがキラ子なんだなぁ。
起きることには全て意味があるといいます。これはいったい、何の啓示だというのでしょう? たぶん、私が将来、不動産購入でもするようなことがあれば、役に立つのかもしれません。
入り口から入った感じを確認し、出た時の感じを確認し、納得した時だけ契約する。そのような頑固さと粘り強さとリサーチの姿勢を実地に教えてくれる人は、私の周囲にはいません。そう考えると、これはすごいことなのではないか、と思えてきました。