ヒーリングセッションを終えて窓を開け、換気をしていたところ、ハエトリグモ(通称クモ隊)若手のオス隊員が窓辺に現れました。外から入ってきた新人なのか、寝室から移動して脱皮を終えた少年隊員なのかはわかりません。
どちらにしても、私の部屋に入ってくるとはセンスが良い。なぜならば私はクモ隊を大切にしており、ティッシュに砂糖水を含ませてもてなすことまでしているのです。
さっそく砂糖水を設置すると、隊員は天上の梁のところからじーーーーーっと
視察
視察
視察
全方向を視察
今の今まで考えたこともありませんでしたが、人間の居室というのは自然界とはまったく光景が異なります。どこまでも白い平面が続き、その向こうに立体の構造物(家具やら家電製品やら)。さて、この隊員は砂糖水に気づくかな?
新隊員は砂糖水のティッシュを見下ろし、私のこともおそらく凝視。クモは他の生物を生物だと認識する知能があるそうですから、私が敵でないことを確認することが重要です。
――降りてこい。そこからまっすぐに降りてきたら、おいしい砂糖水があるぞ。
しかし隊員はさらに進み、カーテンの裏に隠れてしまいました。そうやってじっくりと室内を一周するつもりなのかもしれません。オスの隊員によく見られる行動です。
――あぁやっぱりなぁ。そうですか、そっち視察ですか。はいはい視察視察。
ひよこ隊からは、クモ隊の権利と自由を尊重するよう強く言われていますので、従うしかありません。
日が暮れて、少し雨が降り始めました。とりあえずこの隊員は、天敵がいない室内で夜を明かせます。室内のどこにいるかはわかりません。そのわからなさもクモ隊の魅力です。