部屋にはA、B、C、D、E、Fの五つのカゴが並んでいます。カゴAはお狩り場に直結。そこから東方面へ、カゴはくの字型のように並べてあります。
今日のキラ子はEのカゴ周辺をメインに探検をしていました。餌を探すというよりも、侵入者を警戒しつつ縄張りを拡張しているのかもしれません。
予想どおり、7:48pmにキラ子はカゴの編み目をくぐり始めました。ボディ洗浄ではありません。本日のハウスをどの編み目で設営するかを選ぶのです。
一つ、二つ、三つ…五つ目の編み目がわりあいと広く、よいように思えました。でも、籐がささくれて小さく裂けているのが気に食わなかったのか、キラ子は「う~ん、これはちょっとぉ」というかのように抜け出して、次へ次へと進み出しました。
困ったことに、Eのカゴは端にいけばいくほど編み目がきつくなっています。
――やっぱり、さっきのところでよかったんじゃないの?
「さっきのところがやっぱりよかった」と判断して引き返すという思考がキラ子にあるのだろうか。私は関心を募らせ、じっと観察を続けます。
キラ子は引き返さず、上へ上と登りました。横の段を見て、いけそうな編み目がないかを探しています。その様子は、お盆や年末年始の混雑時にコインロッカーを探す旅行客を思い出させます。
私は当然、キラ子よりもさらに広くを俯瞰できるため、どの編み目がよさそうかがなんとなくわかります。
――キラ子、もうええやないか。そこにせい。そこに。
そんなふうに、ふと、短気な大阪のオッサンのような声が心に響いてくるのでした。しかし、ここで手を出しては絶対にいけません。
キラ子はとうとう一番上の段にたどり着き、カゴの裏面へ行くか、このままカゴの表の面を探すかの選択に迫られました。表の面は、言うなれば「日当たり良好」とか「オーシャンビュー」に当たります。
キラ子は考えた挙句、そのオーシャンビューを選び、上から二段目の編み目を一つひとつくぐり始めました。
――それ、それや。それでぴったりや!
再び短気なオッサンの声が叫びます。しかし、キラ子にとっては少しでも編み目が広いとイヤなようで、「う~ん、これもダメ、却下~」みたいな感じで次へと進みます。
私がイライラし始めていたのは、キラ子がある編み目のところで4~5分ほど考え込んでいたことも一因です。その編み目は、たまたま、籐の色が黒くなっており、ささくれた部分が小さく飛び出しているのでした。
「なにコレ~。何があるの~。危なくない~? ちょっと見てみる~ええ~…何これ~」といわんばかりに凝視し続け、動かないキラ子。ものすごく思考をしている様子です。
それだけに、上から二段目の、五つ目あたりの候補が今日のハウスに決まった時はほっとしました。と、思ったのも束の間で、就寝を確認しようと見てみたら、なぜかそのスポットも気に食わなかったらしく、また外に出ています。
(´Д`)