夜10時になり、もうそろそろ、と思って虫眼鏡を手に近づくと、キラ子は「あっ」というふうに、即座に編み目の中にもぐり込みました。結局は、そこの編み目をハウスにしようと決めていたようです。まだ眠りたくなくて外に出ていたのか。
気のせいかもしれませんが、頭が丸っこくなってきて、愛らしい容姿になってきました。脳の発育が活発であると思いたいです。
ハエトリグモが人間になつくことはない、と専門家は断言しています。しかし、他の生物を生物として認識する能力はあると、何かの資料で読みました。となると、あとは敵なのか、敵ではないのかを絶対に判別しているでしょう。
どうやら敵ではなさそうな生物。それがキラ子にとっての私なのかもしれません。
キラ子は朝から堂々と床の広いエリアに出て、本の影に隠れてみたり、FやEの棚を眺めたりしています。同じ部屋で、キラ子と私の住み分けの感覚ができつつあります。