新しい自分の作り方

BHSバーバラブレナンヒーリングサイエンス認定プラクティショナー/シカ・マッケンジーのブログ

ある種の敬意

丸一日と半日、高所からくまなくお狩り場を視察したキラ子は新たな行動に出ました。ついに土の上に降り立ったのです。虫眼鏡で覗き込む土の世界はエキサイティングなジオラマさながら、起伏や凹凸に富んだその光景。

 

まるで怪獣映画のようなそれに溶け込むようにして、キラ子は暗い穴の中を覗いて張り込んだり、小高いところにへばり着くようにして遠くを見張ったりしています。

 

見ていると、一度だけですが、だだっと走って跳びつくような動きを見せました。虫眼鏡でも見えない何かがいたのでしょうか。私には見えない餌が隊員には見えているのでしょう。わかっていても「何それ怖い!」と思ってしまいます。

 

日の入りの時間をはるかに過ぎても、キラ子はお狩り場を離れません。このまま土の上に駐留するのかどうなのかが、私の最大の関心事となりました。

 

10分、20分と観察を続けますが、キラ子はへっちゃらで見張りを続けています。この調子では埒があきそうにない。私はイライラし始めました。やらなければならない翻訳仕事がまだまだ残っているのです。それに、U-nextで映画も見たい。

 

 

――部屋の電気を暗くしてみよう。

 

 

視界が悪くなれば、キラ子は狩りをあきらめるはずです。私は調光器のつまみを絞り、室内を薄暗くしてみました。すると。

 

 

キラ子はゆっくりと植木鉢のへりに近づき、登りました。10cmほど隔てたところに、籐のバスケット。その上に、いつもの小物入れ。植木鉢の外側へと姿を消すと、

 

――跳ぶのか? 

 

跳びました。ゆっくりと、バスケットの壁面を登っていきます。ちょっとだけジグザグなルートで小物入れに到達すると、キラ子はさもそれが当たり前であるかのように、小物入れの蓋の留め具をかけるループの中に入っていきました。その様子はまるで、充電器に戻っていくロボット掃除機そっくり。

 

――ウケる!

 

私は内心小躍りしましたが、同時に、ある思いにも襲われました。昨年のぴょこたん隊員でもさんざん繰り返した「また明日がんばろう」と何度も説得して、段階的に消灯するというパターン。あれをまた、キラ子に対して毎晩するのかと思うと「めんどくさっ!」と思うのです。それはまた、クモ隊隊員たちへの、ある種の敬意の表れでもあると思うのでした。