新しい自分の作り方

BHSバーバラブレナンヒーリングサイエンス認定プラクティショナー/シカ・マッケンジーのブログ

劇場版TOKYO MER

映画脚本の授業において"葛藤と対立を描け"というのは定石になっているのですが、そこがなかなか難しいです。学生さんが書いたもののほぼ全てが、平和すぎる。私はふと、それは人間のホメオスタシス(恒常性)と関係があるのかもしれないと気づきました。

 

生物として、私たちの身体のシステムは、いつも一定のバランスを維持しようとして働きます。脚本術における"葛藤と矛盾"を拒否というか、回避しようとして本能が働くのかもしれない。やはり身体や意識にとっては平和が一番だからです。

 

そこを打ち破って、「こんなことが起きては困る」という世界を想像し、その中に浸り込んで物語を書いていくことは、一見、生物の生理から外れた創造行為と言えるかもしれません。

 

★★★

エキサイティングな映画の脚本というのは、読み手や観客をとことん揺さぶってきます。先日、劇場版TOKYO MERを見てきたのですが、揺さぶりにかけてはこれでもかというほどの大サービスぶりで、嬉しくなりました。

 

横浜を舞台に、東京チームと横浜チームがライバルのようになって対決するのですが、どちら側の主張も正当です。安全第一に医療を施すべきという横浜側の主張と、待っていては助けられない命があると主張する東京側。どちらも正しい主張であり、その両方を抱え持つ救急医療の現場は矛盾をはらんでいる。

 

両者の間で板挟みになるキャラクター、音羽尚がどちらを選ぶかで究極の選択に迫られ、生きるか死ぬかの局面で主人公とその妻が主張を激突させ、というのも非常にナイスな設定と展開であり、これ以上書くと理屈っぽくなってしまうので書きませんが、映画館では皆さん感動して泣いていらっしゃいました。

 

わたくしからは、素晴らしい脚本をありがとうございますとだけ、書かせて頂きます。撮影も編集も特殊効果・視覚効果もすごくよかったです。もちろん演技も。