どうして今年はハエトリグモ(通称クモ隊)が訪れないのだろう。実はそれが災害の前触れではないのか。それとも、と、ひよこ隊に尋ねるたびに、彼らは私の目の前に大きな円がゆらゆらと動くさまを見せ、隊全体の動きを尊重するようにと伝えてきました。
――もしかしたら、別のフロアに拠点を移して活発に動いているのかもしれないな。
別のフロアには空室もあります。建物全体の生態系や周波数の帯域も変化しているでしょう。私という生体が発する周波数も、日々変化しています。
ひよこ隊が教えてくれた大きな円は、南西側へとゆらめいては少し戻ってきます。その方角をふと見ると、小さな隊員がカーテンの隙間から室内を窺っているのを発見しました。
――なんだ。いるじゃないか。
しかし、この隊員はオーラフィールドがまだ強くない印象です。動きもシャイで控えめな感じで、好奇心をむき出しにしてキョロキョロする様子はありません。短時間のうちに、カーテンの裏へと隠れてしまいました。そうしてまた外へ移動するのでしょうか。南西寄りにゆらめく円に従って。