あと1時間でお客さまがいらっしゃるという時に、ふと見ると、キラ子が近くまで寄ってきていたのに気づいてゾッとしました。わざわざ目立とうとするかのように、白い電源コードの上に留まっています。
「危ないよ。何をしているの」
声をかけ、周辺にミニ掃除機をかけてみましたが動じません。ガラスの容器に捕獲して移動させようかとも思いましたが、それも逆効果な気がします。
キラ子は賢い子だ。変にしゃしゃり出てきて踏みつぶされるような真似はすまい。そう思い直し、心の中で「調和。調和」と唱えてフィールドを整えました。
とにかく、今日は白いコードの近くにいたいらしい。そのたたずまいには頑固さすら感じます。
お客様がお帰りになった直後に見てみると、なんということでしょう。キラ子は白いコードの真下に入り込み、完全に姿を隠しています。私たちが談笑している間、そこに隠れていたのかもしれません。
――なんなの、この子は?!
知らないふりをしながらチラチラと横目で観察していると、案の定、「あ~もう大丈夫そう~」とばかりにコードの下から出てきました。このように、来客の際は隠れてくれるのであれば助かるのですが。
夜になって静けさが戻ると、また電源コードの上できょろきょろし始めました。黒いコードもすぐそばにあるのに、わざわざ白いコードにへばりつくのは、白の方が視界がはっきりするからかもしれません。
そして今は、絨毯のへりが気になって仕方ないらしい。ちょっと、この子は手強そうです。