昨日の続きです。
浴室の天井に陣取るヒョロヒョロの隊員を見ながら、私はシャワーを浴び始めました。浴室暖房の送風口からは暖かい風が吹き出してきます。それでも隊員の姿勢は安定していました。
――慣れたのかな?
私は髪を洗い、お気に入りのボディソープに粗塩を混ぜて身体に塗りました。私は毎日、塩を身体にまぶしてから洗い流すのです。それだけですごくスッキリします。
肌の上で塩が溶けていく心地よさを感じていると、隊員が「ズルッ!」と網から落ちそうな動きをし、踏みとどまりました。それまで温風と湿気に耐えていたのかもしれません。
私はあわてて温風を止めました。隊員を凝視しながら身体の塩を洗い流し、入浴を終えました。隊員、危なかったです。
★★★
ヒョロヒョロのクモは、私とはまったく異なる生き物です。どれだけの風や湿気に耐え、何を快適と感じ、何を不快と感じるかは、想像がつきません。
それでも共同生活をするなら、偏見のない目で相手を見つめ続け、相手のことを知らなくてはなりません。愛するのは、その後です。いや、見つめて知ろうとすることが愛なのか。
「きみにもたらされたものは全て、クモ隊からのギフト」。ひよこ隊からのメッセージは、意外にも深い教えのように感じられました。
★★★
さて、今日のお昼に浴室を覗くと、ヒョロヒョロの隊員は再び移動し、シャワーヘッドがかけてあるあたりの天井にいました。
万一、隊員が誤って落下したとすれば、ぎりぎり浴槽か排水溝へと転落しないとも限らない。
――くっ……微妙な位置だ。
クモは「しおり糸」と呼ばれる糸を常に出しており、それを命綱のようにしているはずですが、冬場の浴室という人間の環境を想定しているかはわかりません。
隊員の安全確保を万全にしながら、私が心地よくお風呂に入るには、どうすればいいのか?
共同創造、共同生活。
それは、生体エネルギーフィールドの第4レベルの領域です。アストラルレベルとも呼んでいます。
新隊員の登場で、私のアストラルレベルはさらに活性化しそうです。