私のお友だちで、とても素敵なご夫婦がいます。二人とも仕事で活躍していて、離ればなれで生活する期間もあるけれど超がつくほど仲良しで。国際的なカップルです。
アメリカか日本で、私はたまにお二人と食事をご一緒させてもらいます。その時に、いつも感心するのは奥さまの食べっぷり。
私は彼女みたいにものを食べる女性を他に知りません。なんというか、おいしいと思うものを食べる、そのアプローチが、ものすごくストレートなんです。
彼女はカナダ出身なので、日本のお菓子をあまり知りません。一度ハイチュウをあげたら、ものすごく気に入ってくれたので、またお土産にあげてみた。そしたら、
がっ
とつかんで包装を開け、
ぱくっ!
口に入れた瞬間、もぐもぐと。
そのすばやさは、「おいしそうに食べる女性はかわいい」というイメージさえ超越するほど、率直すぎる。だから余計にかわいい。女の私の目から見ても、めちゃくちゃにかわいいんです。
去年は三人でインド料理を食べに行きました。「これと、これと、これと、これ……」と数種類のカレーやナンを注文し、運ばれてきた瞬間にぱくぱく食べ始め、ああこの食べ方、彼女らしいな……と見ていると、
「I don't like this. (これ、きらい)」
どうやら、ひとつの種類が、口に合わないカレーだったみたいです。
こうして文章で書くと、なんてワガママな人だろう、という感じがするかもしれません。私たちは子供の頃から「食べ物のすききらいは、いけませんよ」って教えられてきていますしね。料理を作ってくれた人にも失礼だし。
だけど、彼女の「これ、きらい」は、見ていてイヤな感じがしないんです。それはもう見事なほどに爽やかで。
シンプルで正直な「これ、好き」の反対に「これ、きらい」がある……ただ、それだけ。きらいって言ったら怒られるかなぁ、誰かを悲しませるかなぁ、なんて恐れや不安は彼女の中にはまったくないのでしょうね。そして、「こんなまずい料理を出す店はいやだわ」とか「よくも私をこんな店に連れてきたわね」というような傲慢さも、たぶん、ない。
ただ、シンプルに、「この食べ物vs.私」についての真実だけを話してる。
私はそんな彼女にとても惹かれます。
せっかく旦那さんと友だちとごはん食べてるのに「これきらい」って発言するのは、やっぱりワガママって思われてしまうかな。でも、本当のところ、誰にだって好きな味と、そうでない味があるもんね。
ちなみに、彼女がきらいと言ったカレーは、相方の彼が「あ、そう」って言って、普通な顔して食べておりました。