ご高齢とおぼしきタクシーの運転手さんと、今はすっかりさびれた道路を走行してもらいながら会話しました。その道路は数年前、「ねずみ捕りの警察がいるから注意しろよ」と、いまは亡き中学時代の担任が言っていた道です。
「この道はねずみ捕りなんていないよ。だってほら、通るクルマがないんだもの」と運転手さん。
「そうですかぁ。あの人、昔の話をしてたのかな。50年前とかの。中学時代の担任が言っていたんですけどね、この道は気をつけろよって」と私。
「中学の?」
「はい、88歳で亡くなりましたけどね」
先生ボケてたのかな、ってかいまは何年だっけ。私は何歳だっけ、もうすぐ先生の誕生日なんだよな、などと思っていると、運転手さんも「僕はタクシーに乗り始めて12年、いや、15年になるかな。この道をずっと北へ行くとね、古い石の道しるべがあってね」と過去と現在の間を漂い出す。
夜のタクシーの車内がちょっと幽玄なアストラル風味をかもし出したところで目的地に到着。
「22時になるとね、ここは一方通行じゃなくて左に曲がれるんです」と運転手さんは左折して去っていきました。
生まれた時から何度も通ってきた道ですが、そんなことは知りませんでした。22時からは左折できる。