続きです。
赤黒いモヤのような光景は、どこか昔の時代を思わせましたが、周囲に何も物がないのでそこがいつ、どこの時空なのかわかりませんでした。
――物がないところに幽閉されているのかな。
すると目の前に、長くて黒い衣をまとった長身の人物。その向かいに、洋梨かジャガイモのようなシルエットの、小さい人物。どうやら、「行かないで下さい」「出て行ってはいけません」と、長身の人物を引き留めているようです。
風景の中にはこの二人しかいないため、なぜ出て行ってはいけないかもわからない。それはまるで、スター・ウォーズなきダース・ベイダーのように間抜けな場面でした。
――くそっ! ここから出せ! 出してくれ! 邪魔をするな!
私の左半身はぎゅっと収縮するかのようにして、私を外へ出すまいとしています。
――また、お前が! 邪魔だ! 邪魔だ! 邪魔だ!
痛みも何もない右半身は、とっくにスター・ウォーズの大活劇を繰り広げているはずなのです。こんなにも、自分が真っ二つに割れているとは……
ふと、私は冷静になりました。そして、こう思いました。
――左幸子って、本当にいい名前だなぁ。
続きます。