思えば身体って謎です。
私たちは毎日鏡を見て「これが自分なのだ」と思っていますが、よく考えると、なぜそんな身体に生まれてきたのか。両親が生んでくれたから? だから自分? いや、でも、この身体……
「いったい何?
なんで、これが本当の自分なの?」
って思いませんか?
私たちは物心ついた頃から、子供としての身体を生きていました。
それが思春期になると、勝手に身体が男らしくなったり、女らしくなったり。
そう、無邪気だった自分が、なぜかエロい存在に。
そんなふうになろうとしたわけではなかったはずなのに。
成長と共に葛藤が生まれます。
個人差はあるでしょう。
私の場合は激烈でした。
大学生の頃に「自分の全身像を絵に描きなさい」という心理テストがあって、
私は意気揚々と顔から首、肩、腕、胸と描いていったのですが、
途中でストップしてしまったのです。
描けなかったんです。
下半身が。
女の子の場合、下腹には卵巣や子宮などがあります。
成長するにつれて生理的なサイクルが活発になり、痛みや不思議な感覚が生まれます。
私は精神がフリーズする(=絵に描けない)ほどの恐怖を体験していたのでしょう。
学校では勉強に励み、スポーツもし、友人とも楽しく過ごし、爽やかに過ごしている反面、大人たちからは妙な目で見られる。痴漢やストーカーの被害に遭って、とても怖い思いをする人もいるでしょう。
そういう外からの攻撃に遭うのも、身体のせいです。
「私の身体が引き寄せてるの?!」
だんだん、自分の身体が謎に満ちた不可解なもの、怖いものに変わっていきます。
お化けが怖い、学校の先生が怖いといった恐怖はまだマシ。
自分の身体がわからない、怖い、といった感覚は精神に大混乱を引き起こします。
男の子は男の子で、また違った変化を体験するでしょう。
彼らもまた、身体の感覚と自意識とが混乱するんじゃないかと思います。
このあたりで、ばきっと分断されちゃうんじゃないかな。
自分の身体をしっかり意識するということが。
だって怖いんだもん。
わからないんだもん。
成人して子供を持って、育児を終えて、年をとって老年期になるとまた不思議。
勝手に身体が年老いていきます。
すると、またまたびっくりですよ。
「何、この皺?!」
「げっ、老眼?!」
いえいえ心を若々しく保ちましょう、と言えば前向きな感じがします。
でも、今ある身体と精神がちぐはぐになるとしたら、それはいいこととは思えない。
バランスが崩れ、つながりが分断されるからです。
自分の身体が描けなかった私のように、成長や老化のサイクルを恐れて否定すれば、怒りや絶望感すら生まれます。すると、ますます動きが固くなり、病んでいくわけですよ。こんちくしょう、この身体、こんなの自分じゃないよ、わけのわからない不気味なものじゃないか、使い方も治し方も知らないよ、って。
大丈夫。怖くない。つなげよう。心と身体を。
本来の自分になろう。肉体も精神も。
そのプロセスは数週間、数カ月、あるいは数年かけてゆっくり完成していく場合もあるでしょう。何も変わらない、変えられない、と悩み続けて、ある時、突然に変化を体験する場合もあります。
いずれにしても、「本来の自分」でいられるようになれば、アンバランスな状態の時よりずっと効率よいパフォーマンスができるはずなのです。病んでいる時は病んでいる時なりに、老いた時は老いた時なりに、もっともっと自然にスムーズに、全てを動かせるはず。
抵抗して抵抗して、抵抗しまくった果てに、ふと力が抜けて、ですね。
あ、意外といいじゃん、この自分。
そう思えるようになるんじゃないかな。