ものほしそうな顔をして、そいつはずっとついてくる。
「ほしい」とは言わない。むしろ「要らない」と言う。
「要らない、要らない」とつぶやきながら、ずっと、ずっとついてくる。
いつの間に?
気がついたら、後ろにいたんだ。とても目障りな、そいつが。
逃げるために、自由になるために、僕は歩き続ける。僕の歩みは重くて、遅い。そいつがねちっこく、押したり引いたりするからだ。
振り向いてやろうか? イエスもノーも言えないくせに僕の後ろをただついてくるお前の顔を見るために。
でも、心のどこかで僕はわかってる。振り向けば、きっとそこには誰もいないんだろう。
目の前は海だ。