五日間の予備自衛官補(技能)の教育訓練に参加してきました。精神教育や職業訓練などの座学、小銃の持ち方や分解結合の方法、体力測定などなど、びっしり詰まった日程です。
号令や点呼の仕方、歩き方など(基本教練と呼ばれます)も厳しく指導されます。きびきびと、規律正しい集団行動が求められます。
私は高校時代、体育会系でしたので、教官の厳しい指導にも元気に返事。慣れていないかたにとっては大変かもしれません。
ただ一つ、どうしてもできなくて困ったことがありました。それはベッドメイキング。
シーツの端をね、マットレスに、こんなふうに折り込むんです。
この折り込み方が、どうしてもできない。
教えて頂いた時は「はい、はい」と返事をしながら聞いているのですが、いざ自分でシーツを持ってみると、わからなくなってしまう。
私は数学が苦手です。図形も苦手、折り紙も苦手。
教官に「違う! そうじゃない! さっき教えましたよね?」と言われると、ますます固まってしまうのです。脳が拒否してしまっている感じで、私は途方に暮れました。
どうして、こんな簡単なことができないんだろう……
拗ねた顔をして立ちすくんでしまった私に、教官はこう言いました。
「これはね、被災地の方々にベッドを作って差し上げる時に必要になりますよ」
この時、私の体に電流が走ったような感じがしました。
私は大きな震災を体験しています。その時の不安。一日を終えて安全に眠れるかどうかわからない行き場のなさ、緊張、恐怖。
今の私はヒーラー実習生となり、日々、皆さまに横になって頂いて安心して頂くことに全力を注いでいます。
被災地の皆さまに、安心できる寝床を作って差し上げたい!
そう思った瞬間、身体が自動的に動きだし、あっという間にシーツを折り込むことができました。
その時まで、私は災害復興支援より、どちらかというと米軍との共同演習に関心がありました。でも……自分が体験した不安や恐怖を思い出すと、強くなって、技術を身につけて、困難な状況にいる方々の支えになれるかもしれないことが、とても嬉しかった。
自衛隊のベッドメイキングは、掛け毛布を二枚使います。一枚は身体の保温のため、もう一枚は化粧毛布といって頭部のエリアを包み込む折り方をします。
化粧毛布の用途は飾りではありません。ごった返す避難所で顔の周りに囲いを作り、プライバシーを守るために使います。
その説明を聞きながら、私は泣いていました。
怖かったでしょう。不安でしょう。
もう大丈夫ですよ。
安心して下さい。
シーツを、毛布を三角に折り込みながら、私は心の中でそう語っていました。
助けたかったのは被災した時の自分だったのかもしれません。そして、災害があってもなくても、今、世界のどこかで孤独と悲しみに震えている誰かのために。
自衛隊に入って、本当によかったと思います。
複雑な思いもありますが、これはまた別の機会に。