わけあって、半分幽霊やってます。
ちゃんと生きているのですが、「もし私が幽霊だったら」と想像して暮らしているのです。
まだ生きてはいますから、冷凍庫からお徳用の大きなアイスクリームの容器を出しながら「幽霊だってアイス食べるんだもん」と心の中で呟いたり。
でも、幽霊やってると、心がすーっと楽になる部分もあるんです。
過去に誰かが私を傷つけた、寂しい思いをさせた、許せないことをした…また同じようなことをされるに違いない、いやだ、怖い、不愉快だ――と、今でもたまにネガティヴな思いに悩まされそうになった時、
「あ、そうだった。
私、幽霊になっちゃったんだった」
となると抗議や仕返し、反抗は不可能。肉体がないんだって想像したら、メールも打てないし。そう思うと、過去へのとらわれがすーっと消えてしまうのです。
地縛霊みたいに情念たっぷりの幽霊でないのなら、場所や時間の束縛からも自由になれます。これは、なかなか素敵です。
誰かのお誕生日に何を贈ったら喜ばれるか、なんて、迷ってそわそわする必要もなくなります。
お誕生日すら、あってもなくてもかまわない。
その人が生まれて生きている姿をそっと見て、ただ、いとおしいと思うだけ。恰好の悪いところも、ぼんやりしているところも、どんなところも、ああ、生きているだけでいいのだなあと。
きっと遠距離恋愛だって、楽になるでしょう。飛行機や新幹線に乗らなくたっていいのです。幽霊ならどこでも行ける。空を飛ぶことも、壁を通り抜けることもできる。いつだって大好きな人のそばに行ける。
そう思うだけでも、ね、意外と幽霊って寂しくないよ。
あとはね、嫁姑問題も。あの世に行ってもイヤミの言い合い、腹の探り合いって、ばからしくない? もういいですよ、済んだことですからね、お互いに、って。
幽霊の目線で見ると世界が変わります。こだわりがなくなって、大きな視野がひらける。
とはいえ、私はまだまだ現世の人間。しっかりと生活もやっていきます。
しっかり足を地につけて、ごはんをしっかり食べて、今日お会いした人としっかり触れ合う現世の私。
もう半分は時空を超えた幽霊の私。魂の私。
生きている身体にこびりついた過去の怒りや悲しみを、幽霊の私がゼロにしてくれるように思います。